ビデオゲームの不思議な暴力性、パート2a : 「暴力的攻撃性と競争的攻撃性の間の薄い線」

Figure 2: "Operant conditioning" leads to voluntary behavior change.
図2:「オペラント条件づけ」は自律的に行動を変える

また、強化学習モデルは、報酬がないとき、または代わりに罰を与えられるとき、どのように行動に影響を与えるか理解するのにも役に立つ。この二つのプロセスを共に使うことで、報酬が欲しいときや罰を避けたいとき、どうして人は正しく行動するのかについての行動モデルを作り出すことができる。また、行動アルゴリズムやビ行動スクリプト(特定の与えられた環境に対しての行動パターン)がどう作り出され、維持されるかを示すことによって、強化学習モデルは将来の行動を正確に予測する助けになる。

行動を研究する研究者が使うもう一つの手法は、「非侵襲脳活動計測(Functional Magnetic Resonance Imaging (fMRI))」技術である。所定のタスクを行う間、そのタスクと関連する脳の部位を調べることができる。例えば、パズルを組み立てるタスクの報酬としてお菓子を与えるとする。子供がタスクを遂行する間、非侵襲脳活動計測器を使い脳をスキャンすることにより、研究者はそれぞれの脳機能と報酬ベースのタスクの相互関係を区別する。

行動研究者にとって特に関心がある二つの場所は、前頭前皮質(Prefrontal Cortex (PFC))にある。まず一つは背外則前頭前皮質(Dorsolateral PFC (DL-PFC))と二つ目は前帯状皮質(Anterior Cingulate Cortex(ACC))と呼ばれる。これらは行動アルゴリズムの評価と構成の基礎として知られている(図3参照)。非侵襲脳活動計測により、先程言及したタスクのような報酬動機づけ行動を行うときのこれらの脳の場所の動きを示すことができる。強化学習モデルと非侵襲脳活動計測を同時に利用することにより、研究者は自発的行為がどう変化するのかがわかり、そしてより重要なことに、「内部状態(internal state)として知られる、感情の本質を把握することができる。

Figure 3: Pre-frontal areas of the brain associated with executive and behavioral function.
図3:執行と行動機能に関連する背外側前頭前野と前帯状皮質を含む脳の前頭前野

「おいおい、みんな眠っちゃうぞ。暴力的なビデオゲームとどう関係あるんだよ?」

全て、である。

強化学習モデルの応用のひとつとして、得点や報酬が目的であるスポーツや他のゲームのようなものを含む、競争行為とされる報酬ベースの行動についての研究がある。このような競争行為は促進または誘導する行為と関連して分析される。これらの行動は報酬が伴うにつれ、再肯定され、子供と数学のテストの例のように、新しい、または修正された行動パラダイムの一部となる。

京都大学論理生命学研究所ウェブサイト[4]による、これがどう達成されるかの例は次の通りである。

「例えばチェスやチェッカーなどのようなゲームをするとしましょう。おそらく最初はどうプレイするかわからないので負けるでしょう。しかし、何度も繰り返すうちにより良い戦略を得、最終的にはエキスパート並みになります。」

このように、チェスのような報酬ベースの学習は、ゲームをする理由が、思い通りの戦略を得るまで試行錯誤を繰り返し、自分がエキスパートになるということが報酬なのだと述べている[5]。

この過程は、少なくともはじめのうちは、何度も負けてしまう可能性が高い。したがって、プレイヤーは目標(エキスパートになったという報酬)を達成するまで、何度も敗北という負の影響に耐えることに前向きでなければならない。

ボードゲームのバトルシップのような戦争ゲームに、このロジックを適用した場合、同じく報酬ベースのモチベーションがプレイヤーの特定の目標(このゲームの場合、相手の戦艦を沈没させること)を達成するために行動を駆り立てる。

ビデオゲームはどうだろうか? チェスやバトルシップと同様に、強化学習モデルに基づいた評価、分析可能な、高競争力の、報酬ベースの行為とみなされるだろうか? チェスとバトルシップは両方とも、ビデオゲームと同類なため、肯定せざるを得ない(下のビデオを参照)。

「では、暴力的なビデオゲームはどうなのか? 」

意見が一致しないのはここである。反暴力的なビデオゲームの支持者によると、暴力的なビデオゲームは、共存する可能性のある報酬意欲のアルゴリズムよりも、凶暴で暴力的な行動をもたらす。この理由として彼らが言うには、暴力的なビデオゲームは何度も繰り返し見ることにより攻撃的な行動を引き起こすことが証明されている「暴力的なメディア」でしかないということ。

「暴力的なメディア」は「攻撃的行為、攻撃的作用、 攻撃的情緒、生理学的覚醒、そして向社会的行動に対する暴力的なビデオゲームの影響:科学文献のメタ分析レビュー(EFFECTS OF VIOLENT VIDEO GAMES ON AGGRESSIVE BEHAVIOR, AGGRESSIVE COGNITION, AGGRESSIVE AFFECT, PHYSIOLOGICAL AROUSAL, AND PROSOCIAL BEHAVIOR: A Meta-Analytic Review of the Scientific Literature)」の記事で次のように定義されている:

暴力的なメディアとは、他人に危害を加える目的で個体が意図的に描写するものである。 「個体」とは人間以外の漫画のキャラクター、実在の人物、もしくはその中間の全てを指す。ゆえに昔ながらの土曜日の朝の漫画(例えば、「マイティーマウス(Mighty Mouse)」や、「ロードランナー(Road Runner)」は、暴力に満ちている。

暴力的なビデオゲームは暴力行為を描いているため、「暴力的なメディア」のジャンルとされている。このように、医学界における反暴力的なビデオゲームの支持者は、報酬ベースの競争的なゲームの原点を完全に無視して、いわゆる「暴力的なビデオゲーム」の表面的な側面を重視している。

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